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社会保障ゲーム体験会【報告】

「知る」ことが「チカラ」になる

~難しい社会保障制度を楽しく学び、自分ごととして考えられる社会保障ゲーム~

 

「楽しかった。知らないことを知れた」

「相談先はあるが、どうアクセスすればよいかに悩む」

「知っているつもりだったが、ゲームを通して実際に考えてみると、分かっていないことが分かった」

「思った以上にいろいろな制度があることが分かった。どれが使えるのかを分かっている人につながるためにどうしたらいいか、考えないと…」

「こんなケースの旗振りを誰がするのかってことを考えてしまっていた。キャラクターの立場になって考え切れてなかった」

「学校の役割と負担が大きいと感じた。家族や本人への支援は一か所では解決できない。サービスが縦割りに感じる」

 

 

 これらは810日に社会保障ゲームを体験した人たちの感想です。小学生から大人まで、幅広い年齢層と様々な立場(職種)の方に体験してもらいました。

以下に、第1回社会保障ゲーム体験会の開催報告を記します。

 

 

今回の参加者は6名。小学6年生も参加されるとのことで、あらかじめ12枚のキャラクターから3枚のキャラクターに絞って行いました。ピンチについてもキャラクターごとに厳選したピンチが起きるという設定にしました。

プレイシートだけでなく、ホワイトボード(WB)を使ってより可視化した進行を心がけました。キャラクターの説明ではWBにジェノグラム・エコマップを作成し、キャラクターに起きたピンチは赤色で追記しました。

ピンチカードの内容からより細かな設定(例えば家族というのは誰か。家族でも父なのか母なのかきょうだいなのかなど。それによって困りごとって微妙に違ってきたりする)を加え、エコマップに書き足していきました。

 

 

 ここからは、キャラクターになりきって困りごとを考えてもらいました。10代の高校生になりきるのは難しい面もありましたが、皆さん意識して取り組まれていました。

そして、ひとりひとり付せんに書いた「困りごと」を発表してもらいます。ファシリテーターが、用意していた模造紙に貼っていくようにしました。ファシリテーターも困りごとを一緒に考え発表しました。

たとえ同じ内容であったとしても、参加者一人一人が書いた内容をちゃんと発表してもらうこと、他の人の意見を聴いて「それもあるよな」と思ってもらうことも大事と考え、時間をかけて困りごとをまとめていきました。壁に貼りまとまりごとに並べることで参加者からも見やすく、そして、考えやすくなったように思います。まとまった困りごとは、WBに箇条書きして、休憩中に付せんに書き写し、プレイシートに貼っておきました。

 

 

休憩後、アイテムカードを並べます。細かな内容まで分からなかったとしても、こんなにたくさんの制度があるんだなということを意識できるだけでも良いということが分かったように思います。

「お金に関する困りごとに対応できそうなカードを探しましょう」。参加者にそう促して、カードを探してもらい手に取ったカードを各人に読み上げてもらいました。そして、ファシリテーターの上田から制度に関する補足説明を加えたり、このケースに使える制度かどうか質問を投げかけ深く考えてもらったりしました。やはりこの時間がこのゲームの肝なのかもしれません。

ただ、中・高の学校でゲームをするとして、教員がファシリテーションしたり社会保障制度の補足などに対応できるかと言われると「ちょっと難しいかな」という意見も聞かれました。「ファシリテーションできる人を増やして!」と強く望まれたのも印象に残ったことでした。

 

 

ゲーム開始からここまで約100分。通常のゲーム進行とはほど遠いものになってしまいましたが、初回で慣れない進行でもあったので全体的には「良し」とできる体験会になったのではないかと思います。何より、参加者の皆さんが「楽しく」「学び」「自分事として」「考えて」もらえたことが一番の喜びとなりました。「楽しく」ゲームができるのかな?と思っていた私ですが、「楽しく」には「FUN(たのしい)」だけはなくて「INTERESTING(きょうみぶかい、おもしろい)」という意味もあるのだなと気づかされたゲーム体験会でした。

 

 

 最後に、ゲームを通した私の学びで締めたいと思います。

ひとつは、「患者さんや障害者、失業者などに“なってしまえば”使える制度があるけれど、いわゆるグレーゾーンの人たちに対する制度が無いな」ということです。

また、「16歳の高校生である自分がいきなり役所の窓口に相談に行けるだろうか(いや無理)。身近な家族に相談したり友人に勇気を出して聞いてみたりするだろうけど…できないことが多いんじゃないかな」ということです。

そして、「専門家につながると助けてもらえそうだけど、専門家につながるまでにはたくさんの壁がある。その専門家につながったとしても専門の分野が違うからという理由でたらいまわしにされることだってあるだろう。総合診療医ならぬ総合相談員が必要だ。それってソーシャルワーカーと言われる人なんじゃないの?」ということです。

普段の実践の中で、また、この社会保障ゲームを通じて、考え続けたいと思います。

 

(文責:うえだこうき)